マスクのなかは・・・

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幼稚園は新入園児さんを迎え、賑やかな毎日です。靴箱やロッカーの場所を覚え、靴の脱ぎ履きも上手になってきました。シールを貼ったり、上着をハンガーにかけたりする時は、近くにいる年中さんや年長さんが一生懸命お世話してくれています。一つ進級したという自信と自覚が、行動に表れ、頼もしさを感じています。

入園してまもなくのある日、「おかあさ~ん!!」とずっと泣いているお子さんを見守っていた時の事です。このような時は、手を握ったり、背中をそっとさすったりすると、落ち着くことが多いのですが、少しでも傍によると、すっと距離を取られてしまい、なかなか近寄らせてもらえません。「さて、どうアプローチしようかな?」と思っていた時、お子さんのマスクの上の目が、「お母さ~ん!」と泣きながらも、私からずっと目をそらさない事に気づきました。「これは…??」と思い、試しにマスクを下げ、にこっと笑いかけてみました。

するとその瞬間にぱっと顔が変わり、泣き声が少し小さくなったのです。「ああ、やっぱり…」と思い、そのまま笑いかけていると、ほどなくして初めて笑顔を見せてくれ、そして大好きなトミカについて質問すると一生懸命教えてくれました。その後は私がマスクを戻しても、手を握って一緒に歩いたり、膝に乗って絵本を見たりする事もできました。

やはり、表情が見えないという事は、こんなにも影響するのだなとつくづく思いました。

ご家族から初めて離れてきた場所、初めて会う先生や友達…不安はもっともです。“この人は信頼できる大人なのかな…?”表情の代わりに、雰囲気や言葉から様子を伺っていたのでしょう。

“大丈夫だよ、これから一緒に過ごす仲間=先生だよ”…という気持ちを込めた(つもり)の、たった一瞬の笑顔が、不安をすっと解決できる事を知った出来事でした。やはり笑顔が安心への一番の特効薬なのですね。

「見えないけれど、マスクの中は笑顔だよ」と分かってもらえるよう、更に目の表情や言葉の柔らかさで伝えていかなければと思いました。いつかマスクなしで思いきり笑いあえる日を願いつつ…

さて、その子はというと、次の日もまた泣きました。でも泣いている時間はかなり短くなり、前日に一緒に見た絵本を自分から見つけてきて、開いて見ることもできました。

そして三日目の朝、玄関で「先生、来たよ」と言ってくれました。控えめに、小さな声で…

それがとてもとても嬉しかったです。

こんな日々の繰り返しで、少しずつ全員が「虹の森カトリック幼稚園の子ども」になっていきます。連休明けもお子さんが不安を感じやすいタイミングではありますが、ご家族の皆様にも背中をそっと押して頂けると嬉しいです。五月晴れのような笑顔が見られるのを楽しみに、お待ちしております。

                   園長 佐々木 圭子

                

                                     

はじめのいっぽ 2021

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春がかけ足でやってきたように感じる今日この頃、幼稚園でもふきのとうやクロッカスが顔を出しました。ちりばめられた小さな春を見つけると、心がほころびますね。

さて、今年もまた、一つ進級した子ども達と、そして新しく仲間になる子ども達とが出会い、幼稚園が一年中で一番きらきらとした季節を迎えます。

ご家族の元から「はじめの一歩」を踏み出して初めて飛び込む社会、それが「幼稚園」です。この幼児期の2年、3年は私達大人の何倍ものスピードで、まるでスポンジが水を吸い込むように物事を吸収し、成長していきます。

子ども達は子ども達自身の関係の中で成長します。お友達を育て、自分も育てられます。大人がどんなに頑張っても与えてあげられないやりとりが、そこには存在します。

自分の気持ちを言葉にして、それを伝えあい、気持ちを感じあう経験をします。いっぱい笑って、時々けんかもして、泣いたり、慰めたり、励ましたり、励まされたりする経験もします。その積み重ねの中で、自分がしてもらって嬉しかった事を、友達や家族にもしてあげたいという気持ち、そして自分がされて嫌な事は、周りの人にもしない、という人間関係を築く大切な力が育っていきます。

お子さん達は、最初はお母さんと離れる淋しさから、涙をこぼすかもしれません。そこから「はじめて」のハードルが連続でやってきます。よいしょ!よいしょ!と一つずつ飛び越えるうちに、どんどん逞しくなっていくのです。これからの1年で、どんな事を感じ、どんな言葉で話し、どんな表情を見せてくれるのでしょう。ご家族の皆様と、お子様を真ん中に、手を取り合って成長を見守り、喜び合っていける園生活を共に創って頂けましたら嬉しいです。今年度もどうぞご理解ご協力を宜しくお願い致します。

園長 佐々木 圭子

笑顔のちから

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     「イエスさま わたしに いつでも笑顔を 

        あふれる感謝を 許せる心を

 どんな時でも どんな人にも 与える愛を 愛をください」

これは子どもたちがいつも歌っている「愛をください」という聖歌です。私はこの曲がとても好きです。子どもたちの歌声でこの歌を聴くと、「ああ、本当に良い歌だなあ。大人もこうありたいなあ」と歌詞の深さに何度も気づかされます。

この歌にあるように、子ども達にいつも持っていて欲しいもの、それは何といっても笑顔。そして自分を大事にする事、周りの人のことも大切にできる事。わたしを、ぼくを、いつでも一番に思い、自分より自分の事のように思って行動し、喜び、悲しんでくれるお母さん、お父さんがいる事。愛されている事への気づきと、それに対する「ありがとう」の気持ち。与えられることよりも、与える事を喜べる愛の気持ちです。

卒園する年長さんは、小学校で新しい世界が待っています。楽しいこと、わくわくする事がたくさんあります。同時に、初めて見るカラーの友達との生活の中で、時に理不尽な経験、心の痛みもあるでしょう。  

そして保護者の方は、お子さんの心に自分自身の経験を重ね、大人の手が届かない「子どもだけの世界」の歯がゆさや、やりきれなさを感じる事もあるかもしれません。そのような時にこそ、「自分でできるように手伝ってね」というモンテッソーリの心を思い出して頂きたいと思います。自分でハードルを乗り越えていく力をつけるためにはどうしたらよいのか、どんな言葉で自分の気持ちを伝えたらよいのか、周りの友達とどのようなコミュニケーションをはかったら良いのか、一緒に考えながら背中を押してあげて頂きたいと思うのです。傷ついても帰れる場所がある、絶対的な味方がいつもそばにいてくれる事を知っている子は、もっと強く、もっと優しくなれる事でしょう。傷が癒えたらまた勇気をもって外の世界に行けるはずです。

最後に、お母さん、お父さんにこの祈りを贈ります。

            主よ、慰められることより 慰めることを
             理解されることより 理解することを、
              愛されることより 愛することを、
                わたしが、求めますように

         (アッシジの聖フランシスコ 平和を求める祈りより)

この一年は誰にとっても大変な、心が折れそうになる一年でした。生活がどんどん変わっていく中で、変わらない心でいる事の難しさも知りました。落ち着かない日々の中で、この祈りが心の平静をすっと取り戻したい時の一助になると嬉しいです。そして園生活においても沢山の変化を強いられる状況でしたが、皆様の温かいご理解ご協力を頂けました事に心より感謝申し上げます。直接お会いできる機会は少なかったですが、皆様のまさに“変わらぬ笑顔”に何度も救われました。健やかで明るい日が、一日でも早く戻ります事をお祈りしております。

                    園長 佐々木 圭子

                              

    

この笑顔がいつまでも守られますように・・・

2021年への願い

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新年を迎えて半月が過ぎ、いよいよ3学期が始まりました。年末から例年にない厳しい冷え込みが続きましたが、ご家族皆様お元気で過ごされたようで安心いたしました。

「この一年も平和でありますように…そしてお子様にとって、ご家族の皆様にとって笑顔溢れる明るい一年となりますよう心からお祈りしております。本年もどうぞよろしくお願いいたします。」 

これが2020年1月号に書いたご挨拶です。この時はコロナウイルスというものの脅威についてまだ情報も少なく、隣国で恐ろしいことが起きているなあとしか感じていませんでした。あっという間に私達にも現実のものとして降りかかり、この一か月ほど後には休園措置を取らざるを得ない状況になりました。上に書いた私の願いは届かなかったのだと、読み返してあらためて気づいたところです。

年賀状に添える一言が、今年は長い文になりました。元気ですか?に込める思いが祈りになりました。初詣でお賽銭を投げた後に(カトリック園なのに恐縮です…)家族だけでなく、園の子ども達、ご家族の方、先生達、離れて会えない友人…頭に浮かぶだけの祈りの言葉を出し切りました。分散参拝が幸いし、人もいなかったので気兼ねなく長い時間手を合わせる事ができました。

反対に周りの人から頂いた言葉の温かさにも随分と励まされました。頂いた言葉、思いを無駄にしないよう、言霊を信じ、悪い事はできるだけ口にせず、何気ない日々の小さな楽しさや喜びの中に、特別なありがたさを感じる事も増えた気がしています。

コロナウイルスの収束は見えず、ふと先を見通そうとすると心が折れそうになる事もあります。それでも子ども達の元気さと笑顔を見ると、エネルギーが満ち、これまでと変わりなく遊んでいる姿に安堵すると同時に、希望が湧いてきます。先を考え過ぎず、目の前の一日を安心して過ごせるよう、丁寧に過ごしていくしかないのだなと思えます。

さて、子ども達の大事な3学期、一人一人のまとめの期間をしっかり支える事、冬休みの間の成長を見落とさずに、次のステップに導いてあげながら、新しい春に向けてスタートを切ります。

私の祈りは小さく弱かった事がわかりましたが、それでも敢えて書きます。この一年が平和でありますように…お子様にとって、ご家族の皆様にとって、遠く離れた大切な人にとって、少しでも笑顔の増える明るい一年となりますよう心からお祈りいたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

クリスマスとこどもたち

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もうすぐ12月。朝のお祈りの時間には、クリスマスの聖歌が聞こえてくる季節となりました。心配なニュースが続く中、子どもたちの歌声にほっと癒されるこの頃です。園では、イエス様のお誕生日であるクリスマスに、頑張る心、優しい心をプレゼントしようと遊戯や劇の練習に取り組んでいます。取り組みがスタートしてすぐの今の時期は、子どもたちの目が一番きらきらしています。自分が演じる役を教えてくれたり、その日に褒められた事を伝えてくれたり、新しい何かに挑戦することにわくわくしているのです。活動が進んでいくと、それが少しずつ落ち着いてきて、自分の事だけでなく周りの様子に目がいき、全体を見られるようになります。友達と一緒に「〇〇を頑張ろう!」という毎日の小さな目標が生まれ、それを積み重ねるというプロセスを経て、皆で一つの物を作り上げる喜びを経験できるのが、クリスマス会のねらいでもあります。変わっていく子どもたちの様子をしっかり見つめながら、それぞれの成長を心にとめて過ごしたいと思います。

ちょっとだけ、今年のプログラムをご紹介しますね。

満3歳児さんと年少さんは、一緒に3つのグループに分かれて遊戯を踊ります。毎年の事ですが、どんな様子になるか大人も本当にドキドキします…踊るかな?泣いてしまう子はいないかな?…でもどんな姿も、はじめの一歩、成長の一歩。初めてスポットライトを浴びて人の前に立つ、今しか見られない小さな可愛らしい姿をどうぞお楽しみに!

 年中さんは絵本を基にしたオリジナル劇に取り組みます。森の動物たちから怖がられているおおかみくん。友達が欲しいといつも願っていましたが、ある日勇気を出して声を出してみると…?先入観や思い込みを捨てて、心を開いて近づいてみたら素敵な出会いがあるよ!という深いテーマを、元気に楽しく演じます。子どもたちにもこの物語の本当の意味が伝わるといいなと願っています。

年長さんはいよいよ、憧れだったイエス様の降誕劇に挑戦します。静かな聖夜、その時に起きた不思議な物語を、一人ひとりの登場人物の意味を考えながら、自分の役に責任を持ち、言葉や歌で紡ぎます。最年長である年長さんは、大人になった分、緊張も大きいかもしれませんが、力を合わせて一つの大きな劇を創り上げる喜びを味わって欲しいと願っています。

毎年の事ですが、この劇が終わった瞬間の大きな安堵感と幸せな気持ちは何物にも代えがたいものがあります。それを皆さまと共有できる事が、カトリック幼稚園としての大きな喜びでもあります。

一人ひとりがその子らしく、今持っている力の全てで輝いてほしいという心からの願いを込めて、本番を見守りたいと思います。そして、今世界中で悲しみの中にいる人々が、一日でも早く安心して生きる喜びを保証されるよう、皆さまにもご一緒にお祈りしていただけたら幸いです。どうぞ温かいクリスマスを迎えられ ますように・・・。

                                       園長 佐々木 圭子

年長さんが練習しているひつじぐみに飾ってありました。
みんなで温かいクリスマスを迎えられますように・・・