絵本の世界
日暮れがどんどん早くなり、雪虫も飛び始めたこの頃、一段と秋の深まりを感じます。「実りの秋」「食欲の秋」、色々な秋がありますが、今回は「読書の秋」のお話しです。
私は絵本が大好きで、自宅の本棚には、幼稚園の頃に買ってもらった懐かしい絵本から、大人になってから気に入って買った絵本まで、気付くと80冊近くが並んでいます。今回は、その中から、幼い頃に何度も何度も繰り返し読み、記憶が鮮明に残っているものをご紹介しますね。
「おやすみなさい フランシス(ホーバン)」
フランシスは小さなアナグマの女の子。そのなかなか寝付けない夜のお話です。次々と怖い想像をしては、ベッドルームと両親がいる居間を行き来し、何度も窘(たしな)められ、やっと眠りにつくまでの物語です。姿こそアナグマですが、それは小さい子どもそのもの。誰もが体験した事のある、一人で寝るという成長の一歩の場面を描いた絵本です。見慣れたはずの物が恐ろしく見える…ちょっとした音にドキドキする…そんなフランシスに共感して、怖い怖いと思いながらも、つい何度も手に取ってしまう本でした。お父さんやお母さんがフランシスにかけるセリフも粋で、遠い外国の匂いがプンプンします。そして、この絵本を読まなくなった頃には、一人で寝ることにも慣れ、ちょっぴりお姉さんになっていたような気がします。
「さむがりやのサンタ(ブリッグズ)」
あまりに有名な絵本なので、読んだ方も沢山いらっしゃる事でしょう。一年に一度、子ども達が待ちに待っているクリスマス!ところが、サンタさんにとってはまるで面倒な大仕事のよう…幼心にカルチャーショックを受けつつも、一方でそれがとても楽しく、つい同じ場面で笑ってしまうのです。漫画のようなコマ割りと、ユーモラスなセリフ、そしてさりげない愛が描かれた、大人になっても楽しめる一冊です。
「はるにれ(姉崎一馬)」
これは文字のない、写真だけの本です。一本のはるにれの木の四季を写しているのですが、そこには確かに言葉があり、厳しい自然の中で生きている木の命が伝わってきます。繰り返し繰り返し写真を眺め、文字を読むのではなく、自分の心の中で物語を作る、こんな絵本も心を育ててくれる事でしょう。
そしてぜひ、子ども達に、そして保護者の皆様にも素敵な絵本と出会って欲しいという願いを込めて、こどものとも社 藤田 春義さんをお招きし、絵本の講演会を開催します。20数年前、保育者になりたての私に、素晴らしい絵本に出会わせてくれたのが藤田さんでした。とっておきの絵本のお話しをお聞かせ頂ける事でしょう。
どうぞお楽しみに!
園長 佐々木 圭子