暑く、長かった夏もようやく終わり、青い空にうろこ雲が美しい季節になりましたね。
子ども達は10月のお店屋さんごっこに向けての活動が始まりました。年齢やクラスを超えてのグループ活動の中で、新しい交流関係にも期待が高まります。アイデアを出し合ったり、それを協力して作り上げる作業であったりと、たくさんの過程があります。思いを伝える事、それについて考える事、相手の意見を聞く事…それはなかなか難しい事です。でもそれらはこの先の人生において、人と関わる土台を作る経験なので、大事に進めていきたいと思っています。
その「言葉で伝える」という作業は、言い過ぎても、言わなさ過ぎてもうまくいかない、繊細なバランスの上に成り立っています。
本音で言いたい、そして相手の本音を聞きたい、という直球派もいれば、柔らかく言いたい、相手にも穏やかに話して欲しい、というスローボール派もいます。人との距離に対する基準は、本当に人それぞれです。でも、会話はキャッチボールですから、どちらにしても相手に届くよう、できるだけそのストライクゾーンを狙いたいところです。言葉選びを正確に、誠実に、自分の思いを伝えたい。でもそこには、投げるだけではなく、キャッチする力も必要なのです。それは「傾聴力」と言い換えても良いかもしれません。
ほどよく力を抜いて、相手に対する壁を作らず、思いを伝え、そして何よりも耳を傾けるという姿勢を大切に…そこから心の余白が生まれる事で、相手の立場や気持ちを想像する事ができるからです。そして相手がどのような球(言葉)なら受け取りやすいのかを理解しようとする事で、コミュニケーションスキルがあがり、気持ちの通ったキャッチボールが続くようになるのかもしれません。キャッチボールがうまくいくようになると、自然とチーム力があがります。一人ではできない貴重な体験のチャンスにも繋がっていく事でしょう。
この“自分の考えを言葉にすること”“人の話を聴くこと”について、子ども達には「言葉で言ってごらん?」「〇〇ちゃんのお話も聞いてあげてね」とシンプルに日々伝え続けています。初めは上手くできませんが、経験の積み重ねによって、コミュニケーション力が育っていきます。自分中心だった世界から、触手を伸ばすように人と繋がり、人との関わりの楽しさを知っていくのです。
そうそう、言葉と言えば、この春に忘れられない出来事がありました。
「先生、今日、良い事があったよ。年少さんに優しくしてあげたら、私まですごく嬉しくなっちゃったの!」
この愛ある言葉に、胸がズキュン!となりました(笑)。ノックアウトです!
こんな素直な、善い物だけでできた言葉を受け取る幸せを感じながら、自分も何か善いものを届けられる人になりたいと思いました。
言霊の力を信じて、ポジティブに。心地良い空気を自分から作っていきたいものですね。
園長 佐々木 圭子