園長先生からのメッセージ日々の子ども

アゲハ蝶との時間

少しずつ初夏を思わせる日差しが増え、子ども達も太陽にエネルギーチャージされたかのように、ますます活発に、元気に戸外での活動を楽しんでいます。  

幼稚園では、昨年8月にお友達が持ってきてくれたキアゲハの幼虫が、その後“越冬サナギ”となり、半地下の教材室で、じっと春を待っていました。9か月を経て「そろそろ温かくなってきたから大丈夫かな…」と玄関に出し、光を浴びさせたところ、なんと!5日後から次々と、計7匹全てが羽化しました。サナギは当たり前ながらピクリとも動かないので、その中で命はちゃんと繋がっているのか…はたまた羽化は難しいのか…ドキドキしながら待っていたので、感動しました。生命の奇跡を間近で見られて、子ども達にとってもとても良い経験となりました。

さて、その最後の一羽の飛び立ちを皆で見守っていた時の事です。指にのせて、飛び立ちを待っていたのですが、ちょっと肌寒いお天気だったせいか、なかなか飛びません。ゆっくり羽を広げたり閉じたりするばかりです。一旦、園庭花壇の柱の上に置くと、周りで見ていた子ども達から「頑張って~!」「飛んでごらん!」などの声援が飛びました。そのうちその声がまとまって、「がんば~れ!!がんば~れ!!」という大きなコールが沸き起こりました。まるで運動会のような声援です!世の中にこれほどエールを送られた蝶は他にいるかしら…??と思いつつ様子を見守っていました。するとある子が「お腹すいてるんじゃない?」と花を持ってきました。それに続いて数人が我先にとお花やクローバーをつんできて、あっという間にスペースがいっぱいに…逆にアゲハ蝶が羽を広げる場所がなくなりそうなほどでした。一人一人が、アゲハ蝶に何かしたくて、元気になってほしくて、仕方がないのです。短い時間の中で、色々考えて行動してみる姿が、とても面白かったです。

ですが残念ながら、その時は飛び立たないまま片付けの時間になりました。一度カゴに戻して休ませて、午後の暖かいおひさまの下で再びチャレンジです。今度は数メートル飛んでは草に着地し、それを何度か繰り返した後に、風に乗って街路樹を超え、無事に飛んでいきました。「わ~!!飛んだ飛んだ!!」。アゲハ蝶は、追いかける子ども達を眼下に見ながら(多分)、どんどん遠ざかっていきました。手を振ったり拍手したりしながら皆でそれを見送ったのでした。

生まれて初めて経験する“ドキドキ”は子どもの日常にはたくさんあって、当たり前の事ながらその感動や喜びの大きさは初回がマックスです。2回目は、また一味違いますよね。「初めて!」を感じる瞬間を毎日ちょっとずつ楽しんで、豊かな感性を育める生活を作ってあげたいと思っています。

                                    園長 佐々木 圭子

    今頃どこを飛んでいるかな…?